あたらしい

新しい音楽を探す。出会ったあの人の部屋は本で溢れている。古い少女漫画をたくさん抱えて、壁にかかった薄い鏡にあの人の横顔が映る。その横顔は目の前にいるあの人よりなんとなくきれいだった。

ここに住むあの人をわたしは知っていたと思っています。

新しい音楽を探し、新しい服を探し、新しい本を探し、新しい家を探し、新しい人を探しつづけている。

女は腕を噛んでいた。悲しくてもわたしに痛みが返ってくるとなんとなく今日はそうだったかなと思って、明日の食べるものを考えないとと思い出したように楽しくなって、横にいる自分が楽しそうに笑っているのを見ていたら楽しくなった。

なくしたものがないように、いつもどれも確認したい。確認すればするほど何がどうなっているかをなくしてしまうので、わたしはわたしを知っていたい。って言ってるのを聞きました。

遠くでなくなるのを聞いた。聞いていた。頭の中でいつも見ている景色に何かが吹きつけて、大きい音が鳴って、そのまま砂漠になった。楽しい夢の話をする人が好きだった。こどもが笑う意味がわからないまま大人になった。こどもがどこかに立っている。私はあの子に食べ物と人形を与えるだけ。

お父さん迎えに来ないね。

私が言った。

あなた誰にも救われないね。バカみたいに救われないね。いつまでそこにいるんだろうね。面白いね。いなくなればいいね。いつまでもここにはいられないのでまた様子見にくるね。こどもは嘘みたいに笑っている。どこかの考え事をしている途中、じゃあまたって言ってるのを遠くから今日も聞いていた。死なない夢を知りたいね。