あなたに話すまでもないこと

通りすがりの人混みから「きっちゃった 3センチ」と聞こえた。女の人の声で、それは嬉しそうでもあり悲しそうでもあり恥ずかしそうでもある。きっちゃった3センチってのは髪の毛のことだと察しまして、髪の毛を3センチって大したことないのではと思いましたが、この人にとってはとても重要な言い方で、もしかしてこの人は1センチ単位ですべてを感じ取っているのか思って、LUMINEに蔓延る人を見渡しました。ここにいる大体の人たちは誰にも気づかれない三センチの機微を抱えて生きて、その三センチの機微を満たしにこのLUMINEという場所に来ているようでした。誰のために、自分のために、誰に気づいてほしくてほしくなくて、ここにいる人たちはどうやって生きているんだろう。女性でいることを謳歌しようとしているらしくて、自分にはずっと手の届かない感覚をみんなは握りしめて生きている。みんなキラキラしようとしている。ハロプロの歌詞にありそうや…といった面でも感動しました。

あの子から送られてきた指輪の写真。本当に輝く石がついていた。輝く石って本当にあるのか、どこかで作り話だと思っていた。この世にあるらしい。これは現実か。「おめでとう」と誰かの字で書かれたスタンプを送る。別に悲しいわけでもないけどどちらかというとうれしいけどかなしいかも。どこかでみんなと違う道に片足が出てて、その地面がどんどんぬかるんで、ぬかるみだけに気を取られていたらいつのまにかみんな天井くらい高いところにいる。きっと同じ酸素を吸っていないし、吐く息ももう同じ色じゃない。みんなには同じ色の息に見えていない。わたしもあなたも何も変わってはいないのに。